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永遠(とわ)の蛍
蛍、やっと見つけた。
二〇一一年三月一一日……。
どうしてこんなに大切な日なのに、覚えていないんだろう。
姉の蛍が津波に攫われ、自分が生まれた日を。
岸野永遠は、声を飲み込んで小さな吐息を漏らした。涙でぼやける眼を手のひらで拭う。
麗しい銀河が、はっきりと見えた。
東日本大震災の夜を再現したプラネタリウムのドームは、幾千万の星の輝きを伝えていた。黄金や白銀の光は、闇夜を退けようとあふれかえった、本物の蛍のようだ。
十三歳の永遠が過ごした中で、最も美しい夜がドームの天頂から地平線に広がっている。心を吹き抜けた風が、ショートカットの髪を撫でたような気がした。
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