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物心ついた頃から、八歳で亡くなった蛍のことは両親に聞かされていた。恥ずかしがり屋で内気な性格と聞いたが、写真を見ると日本人形みたいな可愛い子だと永遠は一目で好きになった。
震災が起こった日、小学校が早く終わった蛍は一人で家にいたようだ。激しい地震の後、両親は携帯電話で蛍の無事を確認し、避難所に行くよう伝えた。
しかし父が急いで駆けつけた避難所に蛍の姿はなかったそうだ。海岸に近かった家は津波に飲まれ、数週間後に蛍の亡骸が見つかったという。
仏壇の写真の中で、蛍は八歳のまま笑っている。年を取らない蛍を追い抜いて、永遠の身長はぐんと高くなった。過去へ置き去りにしていくようで、申し訳なさが募ってくる。
そんなことを思い出し、寂しげに睫を伏せた永遠に、母は表情を緩めた。
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