永遠(とわ)の蛍

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 父が帰宅するころには、二人は夕食を食卓に並べていた。永遠の友達からはイケメンと評される父も、四十代になって少し太ったようだ。  永遠が作ったチキンソテーを、美味いなぁと言いながら食べている。  今度の誕生日ね、プラネタリウムに行くんだよ。蛍が見たかった、私が生まれた日の夜空が映されるんだって。  母には永遠が支えとなった。しかし家屋が破壊された津波の跡地で蛍を探し続けた父は、ずっと悔やんでいるに違いない。だから言葉を慎重に選んだつもりだ。  先に母から話を聞いていたのだろう。父はビールのグラスを傾けながら、赤ら顔で俯いた。  俺は行かないが、お母さんを頼んだよ。きっと泣いてしまうだろうからな。  うん……そうだね。  あと七年したら、俺と一緒にビールを飲もうな。  そう言った父はトイレに行ってくると席を立った。  気がつくと、母が飲みかけてやめた父のグラスを見つめていた。  蛍が生きていたら、もう二十一歳になっていたのよ。彼氏ができていたら、お父さん寂しがったろうね。  母の声は、つとめて明るく装っていた。父との約束を忘れずにいよう、永遠はそう誓った。  目の前の席はしばらく空いたままだった。父はプラネタリウムへ行かないのでなく、悲しみの波に飲まれて行けないのだ。
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