22人が本棚に入れています
本棚に追加
俺たちは鳥居を潜って神社を後にする。狩矢はコンビニのビニール袋からカップ型のスナック菓子を取り出した。蓋を開けてサラダ味のスティックを一本摘むとサクサク齧る。
俺はそれを横目に、町田まで呼び出された理由を訊いた。
「それで、どこ行こうってんだよ。こっちは遅番のバイトで疲れてんだ。今日だって夕方まで寝る気満々だったんだぞ」
「相変わらず面白みのない日々を送ってるニャ、篤人は」
「ほっとけ」
「そんな君の無味乾燥な時間を、今日もオレが面白くしてあげるニャン」
「いらん」
早くもニャンに腹が立ってきた…。
「というわけで、今日も新たな呪物を求めて探索をするニャン!」
にぱっと笑顔を向けられて、俺はやっぱり…とげんなりする。
「おいおい勘弁してくれよ…」
「ほら早く行くぞ篤人。時間を無駄にするニャ」
「無闇矢鱈に歩き回ったって見つかるわけねぇだろ。それこそ時間の無駄じゃねぇか」
「ちゃんと目的地はあるに決まってるニャン」
「は? そうなの?」
「これを見ろニャン」
狩矢がスーツの胸ポケットから四つ折りにした一枚の紙を取り出した。差し出されたそれを受け取って広げる。
どこかの地図が白黒でコピーされていて、一箇所だけに赤い丸でマークがされていた。
「勇利から届いた手紙だニャ」
「え、あいつから?」
驚いた俺の顔を見て、狩矢はにっと口角を上げる。
「今朝起きて郵便受けを覗いたら投函されてたニャン。あいつは気まぐれに呪物がある場所のヒントをくれたりするニャン」
狩矢はスティックを一本抜いてカリッと齧る。
「その地図は町田市の住宅地。マークされている建物に呪物があるってことニャン」
「なるほどな…。つか、妙な親切心があるよな勇利って」
まだ会ったこともない風上勇利の姿を想像する。赤髪の作務衣姿に、カラーレンズの丸眼鏡。一人称が“私”で誰に対しても敬語をつかう同い年の男。…改めて思うが、どっかの二次元キャラにいそうだな。
最初のコメントを投稿しよう!