蝉の声

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 公園の側を通ったら、敷地内の木々から物凄い音量の蝉の声が響いてきた。  生まれてたった七日で終わる命。それでも蝉は、その短い時間の中で精一杯鳴き続ける。  今の時期だと『ミーン』と『シャンシャン』が多いな。もう少しすると、『カナカナ』や『ツクツクホーシ』になって印象が変わるけれど、この時期の蝉は、ともかく大音量で鳴くイメージだ。  これもまた風情と、しばらく木陰で足を止めて聞いたいたのだが、何だか違う鳴き声が混ざっている気がする。  ほぼ『ミンミン』か『シャンシャン』、たまに『ジー』。それに混ざって聞こえるのは…。 『シーネシネシネ』  他分、色々混ざって偶然そんなふうに聞こえてるだけ。そう思おうとした時だった。 「死ーね死ね死ね。俺以外の雄はみんな死ね。俺だけが子孫を残せるよう、俺以外の雄はみんな死ね。死ーね死ね死ね」  …一匹、物凄くが欲の強い蝉がいるようだ。  あれが生存競争に勝ったら、来年からとんでもないことになりそうだから、どうか雌蝉達があいつを選んだりしませんように。 蝉の声…完
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