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「お前は本当に正直だ。これが私ではなく父上だったらとっくに命はないな」
ナシルは黄金の玉座から立ち上がって、透かし彫刻が施された窓に寄った。窓からは処刑台が見えるようになっている。
「お前はずっと、私とタージのどちらかを選ぶことはせず平等に尽くそうとした。胡麻をすって取り入ろうとする者が多い中でムスタファだけはそうしなかった。私はそれが気に入っていたんだ。だからお前が私を拒んだ時、傷付きはしたが許したのだ」
「……恐縮です」
「――とはいえ、国王に逆らったというのは重罪だからな。どう償おうか」
ついに来たか、と覚悟して、ムスタファは命を取ってくれと願い出た。しかしナシルの要求はムスタファの命ではなかった。
「タージを殺せ」
「――え……」
「頃合いだ。これ以上奴の支持者が増えると謀反を囁く者が出てくる。ここらで殺しておくのが良い」
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