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「でっ、ですが、陛下はあれほど殿下との再会を喜ばれていたではないですか!?」 「馬鹿者。手元に置いておいたほうが操りやすく、殺しやすいから王宮に入れたのだ」  ナシルが度々言っていた「王宮に連れて来てくれたことに感謝する」という言葉は、唯一の兄弟との再会を喜んでの言葉ではなかった。始末しやすくなったことに対する感謝なのだ。ここで断ったら今度こそ命はないだろう。けれどもタージを殺すなんてできないし、嘘でも約束したくない。  ナシルはいきなり声を上げて笑った。 「冗談だ! そんな思い詰めた顔をするな。本当にお前は正直者で可愛い奴よ」  それにしても冗談で言っているようには聞こえなかった。嘘か本音かも見抜けないほど、ナシルは心を読ませない。 「ムスタファには国境の警備に当たってもらう。明日には部隊を連れて発て。それが償いだ」  命令が取り下げられたことにはホッとしたが、タージを殺せと言った時のナシルの冷徹な顔が頭に焼き付いている。どうしても冗談とは思えなかった。
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