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ムスタファが派遣された場所は辺境の鉱山地帯だった。開発途中の広大な銅鉱山があり、鉱山を守るため国境線に沿っていくつかの要塞が建てられている。
敵国の軍隊は同じように国境付近に部隊を構えていて、普段は駐屯軍の兵士が敵国の部隊を監視しているが、ここ暫く部隊配置が変わっていると報告があった。侵攻を目論んでの編成かもしれないのことで、軍本部から応援に向かったというわけだ。
派遣されたのは主に騎兵と歩兵の大隊で、ムスタファはその中の一つの中隊を任された。部隊ごとに要塞に配置され、駐屯軍の兵士と協力して防衛に当たることになっている。それぞれ均等に役割と休息が与えられているが、ムスタファは中隊長として寝る暇を惜しんで働いた。上官から強制されているわけではなく、ただ自分がそうしていないと落ち着かないからだった。
「ムスタファ大尉、少し休まれては?」
すっかり空気が冷えた深夜、要塞の展望台にいるムスタファのところに部下の一人が食事と毛布を持ってきた。
「ありがとう。でも疲れていないから大丈夫だ」
「せめてお食事だけでも」
温かいスープとパン。以前の自分なら何も考えずに食べただろう。タージと旅をして見てきた村人や殺されたタージの仲間を思い出して、ムスタファは罪悪感でいっぱいになった。食事は有難くいただくことにする。
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