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翌朝、ムスタファを含めた各中隊長は、大隊長のファイサル大佐から本部に集まるよう指示を受けた。指揮官が集まる本部は要塞の地下に構えており、定期的に会議を開いて作戦を話し合うことになっている。煉瓦造りの湿った地下室に不気味に蝋燭が灯る中、強面の数人の軍人たちがテーブルを囲んだ。
中隊長がそれぞれ状況を報告していくが、いずれも特に変わった様子はなく、攻撃を受ける気配もないとのことだった。このまま敵国が何もせず編成を解けばこちらも軍を撤退する予定だ。しかしファイサルは報告を聞き流したあと、想定外の指示を口にした。
「明日の正午、一斉に攻撃を仕掛け、前線の部隊を殲滅する」
言葉にはしないものの、誰もが動揺をあきらかにした。その中でムスタファが訊ねる。
「……開戦するということですか?」
ムスタファの見る限り相手は鉱山を狙っているのは確かだが、攻撃の意志はない。危害を与えられる前の防止策だとしても、わざわざこちらから仕掛けてまで戦争を始める意味もメリットもないように思えた。
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