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「まずい」
胸騒ぎがして本部を出ようとすると、
「行かせん!」
ファイサルが腰から剣を抜いてムスタファに突き出した。脇腹をかすめはしたもののギリギリのところで身を捻ったので避けられた。狭い場所でまともに相手するのは不利だ。そのうえ他の中隊長までファイサル側に付いて襲ってきたら殺される。ムスタファはファイサルの刃を脇腹で挟んで動きを封じ、胸ぐらを掴んで引き寄せたところで短剣を胸に刺した。
「お許しを」
「……っ、おのれムスタファ……!」
ファイサルがその場に倒れると共にムスタファは階段を駆け上がって地上に出た。ちょうど兵士がムスタファに書簡を持ってくる。
「ムスタファ大尉! ハムザさんから書簡です!」
『タージから口止めされていたが、ナシルがタージを狙っている。
軍部の部隊のほとんどがそっちに向かうらしい。戦争が始まったらお前も当分戻って来られないだろう。
動けるうちに戻ってこられるなら戻ってきて欲しい』
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