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腕を伸ばそうとしたら払いのけられた。
「誰がお前の言うことなんか信じるか! 軍人は嫌いだ! 権力者も嫌いだ! お前たちは口では上手いこと言って思い通りにならなかったら殺すんだ! だから殺される前に俺が殺してやる!」
そう言ってタージは剣をムスタファに刺そうとしたが、ムスタファはシールドを固く張っているので刺さらなかった。薄い膜がムスタファを覆っていて、鉄のように硬い。ムスタファは困惑するタージの手首を握って剣を取った。
「お前はそんな腐った権力者がいない世界にするために、平和に生きられるために国を再建したいんじゃないのか」
するとタージは脱力してその場にくずおれた。
「……知らない……イブラヒムがそうしろって言うから……強くなれって言うから……。それしか生きる理由がない……拒否したら俺はまた独りになる」
タージは自分の意志で王になると決めたわけじゃなかったのだ。
イブラヒムが望んだこと。捨てられた王子を押し付けられて都を去るしかなくなったイブラヒムが王族に復讐するために、少しでも報われるために。タージはイブラヒムの望みに応えようとしていただけだ。そうじゃないとイブラヒムにも捨てられると思ったから。どんなに強がっていてもタージはいつも孤独になることを恐れている。
タージは踵を返してどこかに走り去った。
「待ってくれ!」
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