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「お前が思い描いている理想の世の中を一緒に見たいし、作りたいし、……そのために一番に頼られるのが俺でありたい……。タージがもしセンチネルじゃなかったとしても、俺はタージを尊敬してるし、側にいたいし……信頼して欲しい、と思う……。だから、その……」
タージがなんの反応もしないので、伝わっているのかどうか不安になる。けれども、ここでムスタファまでもが諦めたら一緒になって駄目になってしまう。なんとか強い意思を持って、何度もタージに呼び掛けるしかなかった。
「俺の一番はお前だし、お前の一番も俺でいたい……というか」
――なんて言えば伝わる? タージが一番欲しい言葉はなんだ?
そしてムスタファの心に浮かんだ実直な言葉を、タージに投げかけた。
「あ……愛してる、んだ。それは分かって欲しい……」
まさか自分がこんな台詞を誰かに言うなんて考えたこともなかった。恥ずかしくてたまらないが、口にしたことで尚更気持ちがはっきりしたような気がする。それでもタージの反応はなく、ようやく口を開いたかと思えば、
「愛ってなんだよ」
「え?」
「俺はそんなの知らない。愛ってどんな気持ち? 信頼しろなんて言われても、信頼して捨てられたら俺はどうしたらいい?」
「捨てるわけないだろ!」
「分かんないだろ。実の子でさえ捨てる人間はいるんだ。利用価値のない奴はいらないんだ。ムスタファだってそうだろう。自分の出世や故郷への待遇や、そういう見返りがなかったら主君に尽くそうなんて思わないだろ」
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