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「最初は武装集団のリーダーが国を再建するなんてって馬鹿にしてた。でも一緒にいるうちにお前なら本当にできるんじゃないかって思った。タージは強くて格好いい。……我儘で自己中なところはムカつくこともあるけど、なんていうか目が離せないというか。……とにかく、どんなお前でも側にいて支えたいって思うんだ。それじゃ駄目か?」
タージは答えなかったが、握っている手は温かい。ふと一筋の光が差し込んで、見上げると無色だった空が青く色付いていた。
「……俺はムスタファと違って心が汚れてる」
「そんなことない」
「お前をひと目見た時から、相性がいいのは分かってた……。だからあわよくば……って側に置いた。……でもお前はナシルへの忠誠心が厚かったから、信じちゃいけない、こいつの能力を当てにしちゃいけないって思ってたんだ……」
だからタージは頑なにムスタファを拒んだのだ。だが、完全に拒否することはできなかった。
「それでも一度お前の力を知ったらもっと近付きたくなった……。お前は……あったかくて安心するから……だんだんお前の能力が欲しいのかお前自身が欲しいのか分からなくなった」
ムスタファがタージへの気持ちを自覚する前、触れ合っていると気持ち良くて、いじらしくて、もっと近付きたい衝動に駆られることが度々あった。それがガイドとしての使命感から来るものなのか分からなかった。タージも、同じことを感じていたのだ。
「お前は側に置いてくれって言ったくせに、ナシルといることが多くて、やっぱり簡単に信じちゃ駄目だって……ガイドとセンチネルとしての触れ合い以上は求めたらいけない……」
「それはごめんっ、俺が優柔不断だったから……」
無表情で生気のなかったタージが、片目からポロ、と雫を落とす。空の青が濃くなって荒野にはいつの間にか緑が生えていた。タージの感情が戻りつつある。
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