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「分かってたのに、ほ、ほんとはムスタファがナシルといるのが嫌だった。お前がケアするのは俺だけにして欲しかった。俺の言うことだけ聞いて欲しかったっ」
「これからそうする。ずっとそうする」
「でもそんなのお前は窮屈だろっ! こんな独占欲の塊、嫌になるに決まってる!」
「全然窮屈じゃない。お前も俺と同じように思ってくれてるのが分かって嬉しい」
「……同じ……」
「同じだよ。信じてくれないなら何度でも言う。お前の一番は俺でありたい。お前を一番近くで支えるのは俺がいい。だから俺を側に置いてくれ」
タージがぎゅうっとムスタファの手を握り返した。ムスタファはもっと、しつこいくらいに呼び掛ける。
「能力も忠誠も心も全部お前にやる。だから帰ろう。俺とやり直そう」
ムスタファは泣きじゃくるタージをあやすように、唇に触れた。少し離して、目を合わせて、また重ねる。自分から動こうとしなかったタージはゆっくり両手を伸ばし、ムスタファの首に巻き付けた。太陽の光が照って周りがどんどん明るくなってくるのが分かった。散らばっていたシールドの破片がみるみる再生する。タージの体にくっついて膜を張るように繋がっていった。
ムスタファは自分のシールドを少し緩めて、タージのものと融合させた。二人一緒にシールドに包まれる。初めての感覚にタージの方が戸惑っている。
「な、なんだよこれ」
「センチネルとガイドの精神を融合させることでお互いの能力をより高められるって、前にハムザが教えてくれた」
「でも、それをやったら俺以外の奴のセンチネルとは関われなくなる……」
「他のセンチネルと関わる必要なんてないだろ?」
タージの体を抱きしめ、胸に耳を当てると心臓の音が聞こえた。ムスタファの鼓動と同じ速さで、同じ強さで波打っている。よかった、生きている。――もう戻れる。
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