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 ――……タファ。ム……ファ。  体を揺すられて、ムスタファはゆっくり目を開けた。気を失っていたらしい。背中と脇腹に激痛が走ったが、出血はもう止まっている。上半身を起こして周りを見渡すと、瓦礫の山に囲まれていた。美しい厳かな宮殿はもうない。改めて暴走したセンチネルの力の凄まじさを実感した。 「ムスタファ」  名前を呼ばれて振り返ると、すっかり正気を取り戻したタージが目の前にいた。 「タージ……! よかった、生きてる」 「もう大丈夫。……ムスタファ、ありがとう。俺を連れ戻してくれて。……お前がいてくれてよかった」  ムスタファはタージにしがみついた。本当は少し自信がなかった。現実世界に一緒に戻って来られなかったらどうしようかと思った。だがタージは今、ムスタファと同じ世界にいる。自分を信じてくれたのだ。 「ムスタファ、泣くなよ。情けねぇなぁ……」
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