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ハムザの遺体は故郷ではなく、イブラヒムの隣に埋めてやった。
イブラヒムの墓は、都の外れの、丘の上にある。白壁と大理石の街を眺められる、風がよく通る見晴らしのいい場所だった。ハムザとイブラヒムの関係は本人の口からは詳しく聞いたことはなかったが、タージは「精神的なパートナー」だったんじゃないか、と言った。
「今思えば、俺の知らないところでハムザはイブラヒムのケアをしてたと思う。あくまでケアとして触れ合うくらいだったと思うけど。あいつらに生々しいものは感じなかったから、本当に純粋に、お互いを信頼してたんだと思う」
「恋人とか……ではなく?」
「そういうのじゃないと思う。でも恋人以上の繋がりはあったんじゃないかな。肉体的じゃなくて、精神的に。イブラヒムとハムザは年が近かったし、ハムザは故郷を救ってくれたイブラヒムを本当に慕ってた。ガキの俺が見ても分かるくらい」
へへ、と苦笑する横顔に、少しの嫉妬が見えて、ムスタファはタージの肩を抱き寄せた。
「ハムザは、救ってくれたのはイブラヒムとタージだと言ってた。俺たちの王はタージしかありえないって。年齢的にイブラヒムとのほうが気が合ったのかもしれないけど、ハムザはタージのことをいつも心配して、親のように見守ってた。ハムザは、自分の意志でタージを支えてきたと思う」
タージは俯いて、そっぽを向いて少し目を拭いた。
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