吊る

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「やだな、今日はゴミ掃除で処理しろとは言われてないんだけど……。ハメられたな、あのクソ野郎に」  電話をぶち切り、スラックスに入れては傘を閉じる。数秒遅れて男性の前にやってきたのは、この世界には不要の人間。 「どうも、君らの組長(おやじ)だっけ? 殺したんだけど何か悪いことしたかな。いや、どうせキミ等もゴミだからいいのか。なんかごめん、勘違いしてたみたい。ゴミ掃除しないとね」  彼は傘を閉じ、彼らに向かって駆け出す。(チャカ)を見ても怯まず、銃口を持って軌道を読んでは素早く踏み込み、射程から避ける。一、二――と簡単に避け、傘で腕を殴り(チャカ)を落とさせ、サマーソルト。続けて後ろから伝わる殺気に素早く傘を開く。視界を妨害しては手を離し、隙を見て蹴りを顔面にぶち込む。  その動きは素人ではなく“本職”にしているのか身軽で無駄のない動きだった。  止んだと思ったのに――また、雨が降る。  さっきよりも一段と多い。  しかしそれは、数時間経つとピタリと止む。男は「撃つほどの人は来なかったか」と雨を避けるために開いていた傘を閉じ、天井を見つめた。  そこには吊り下げられた人の亡骸。  一、二、三――と十人弱。  不自然にユラユラと揺れる。 「にしても、今日もよく降った。ほら、床一面が血溜まりだらけ」  アハハッと血溜まりで嬉しそうにはしゃぐ男だが、その笑みとは裏腹に瞳の奥は復讐の炎に燃えていた。
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