吊る

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 仕事をすると必ず雨が降る。  黒スーツの男の場所だけ。   都会離にある今は使われてない倉庫。  そこに瓦礫に腰掛け傘をさしたスーツの男。  天井に穴が空いているのか、彼の場所だけ濡れていた。 「やだな、カチコミなんて聞いてない。やれって言われ殺ったのに。俺をハメたの? 悪い子だ」  スピーカーモードで電話しながら、一回り大きい男の傘にボタッボタッと大きな雫が落ちる。重く一粒一粒力があり、ゆっくり雫が傘の湾曲を添う。やがて露先に溜まり、重さに耐えられず雫が水溜りへ叩きつけられ、ホワンッと波紋を浮かべながら一定の雨音が会話の邪魔をする。 「え、ごめん。雨が酷くて聞き取れない。ん、はい!? 裏切り者? いやいや、話が違うって“モグラ”じゃない」  男性は苦情しながら話すも遠くから近づく、足音にゆっくり腰を上げた。
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