Tequila!

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「なあ藤原、この後時間ある?」 同窓会の二次会帰り道、幼馴染の西田に声をかけられて二人で三次会をする事になった。 場所は任せると言われ、二次会の会場になった繁華街にある居酒屋から徒歩十分程の場所にある小さなBARを選んだ。俺は半年くらい前から週一でここに通っている。静かな雰囲気の中で極上の酒とスイーツが楽しめる、大人の隠れ家だ。 ドアを開けると、三十代くらいの物腰の柔らかそうなイケメンバーテンの舘川くん、五十代くらいで少しゴツめ、スイーツ担当の井橋さんが笑顔で迎えてくれた。 「いらっしゃいませ」 狭い店内はカウンター席のみで珍しく客はいなかった。西田が店の一番奥の席に座り、俺はその隣に座る。 西田とは小、中、高が同じで幼馴染だ。 互いに一人っ子、家も近所で小学生の頃はよく一緒に遊んだ。中学、高校はクラスが一緒だったり離れたりしたが、部活がずっと同じバスケ部で何だかんだつるんでいた。 「藤原、何飲む?」 西田がテーブルに置かれたメニューを開き二人の真ん中に置く。「俺あんまりこういう店来たこと無くてさ」とメニューとにらめっこしている。 「今日はご友人様と一緒なんですね」 舘川くんがおしぼりを差し出しながらニコリと微笑んだ。 「うん。小中高が同じだったんだ。今は違う所に住んでるんだけど、今日は同窓会があって」 おしぼりを受け取りながらそう言うと、西田は顔を上げ営業スマイルを浮かべた。 「藤原くんの幼馴染で西田といいます」 「舘川です。こちらは井橋」 井橋さんが会釈し、西田も小さく頭を下げる。 「ゆっくり選んで下さいね」と舘川くんが西田に向かって声をかけると、「有り難うございます」と西田は再びメニューに目を落とした。 「藤原さんは、いつものにします?」 「うーん、どうしようかな…」 口を開きかけた時、西田が「あっ」と小さく声を上げた。 「どうした?」 「スイーツがある」 いつの間にかフードメニューを開いていた西田が、「お任せスイーツ」を指さして言う。俺は眉根を寄せ西田を見た。 「お前、さっき血糖値がどうの、健康診断の結果ヤバかったって言ってなかった?まだ食うの?」 確かに、ここは客の要望に合わせた絶品スイーツが自慢の店のでもある。しかし、同窓会、二次会でしこたま飲んで食った後だ。俺は酒を飲むつもりでここを選んだ。 互いに四十を過ぎ、身体のあちこちにガタが来始めている。先の同窓会や二次会でも、健康診断で引っかかった、無理のきかない身体になってきたなんて話ていたのに。
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