33人が本棚に入れています
本棚に追加
「まぁそうなんだけどさ。健康診断の結果を見てから嫁さんの食事管理厳しくなってさぁ。家だとなかなか食べさせて貰えないから今日くらい…」
「お前の身体を考えての事だろう?」
奥さんの美幸さんは西田の二つ上の姉さん女房だ。県外の大学に進学した西田は大学卒業後、地元には帰らずその土地に留まり就職した。奥さんとは就職して間もなく職場で出会い、付き合って二年で結婚。翌年には子どもも産まれている。その子どもは確かもう高校生になる筈だ。現在は親子三人、会社近くのマンションで暮らしている。
俺も同じように県外の大学に進学したが、卒業後は地元に戻って就職した。実家には帰らず一人暮らしをしている。彼女がいた事もあるが、結局結婚するに至らず未だ独身。実家は自宅マンションから車で一時間程の距離にあるが、帰るのは盆と年末年始くらいだ。
大学進学で互いに県外に出てからは、忘れた頃に連絡が来て、タイミングが合えば地元で会ったりしていた。結婚前、美幸さんも交えて三人で食事をした事もあり、結婚式にも呼ばれて出席している。
結婚後は会う機会が減っていたが、何だかんだ西田は帰省する度連絡を寄越し、少なくとも年に二回は会っている気がする。
「好きな物食べれないってなかなかストレス溜まるんだよ」
西田が眉間に皺を寄せた。
昔からそのルックスで女性にモテていた彼は四十路を過ぎた今、そこに渋さが加わり世に言うイケオジになっている。不機嫌そうな顔も悔しいけど様になる。俺は呆れて溜め息をついた、その時だった。
「分かります。好きな物、我慢したくないですよね」
井橋さんの言葉に、西田が顔を上げる。
「低GIの甘味料を使ったスイーツがありますが召し上がりますか?」
「え!?是非!お願いします!」
前のめりで目をキラキラさせる西田。
俺は低GIという聞き慣れない言葉に内心首を傾げたが、西田には通じているらしい。
最初のコメントを投稿しよう!