Tequila!

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「まぁそうなんだけどさ。健康診断の結果を見てから嫁さんの食事管理厳しくなってさぁ。家だとなかなか食べさせて貰えないから今日くらい…」 「お前の身体を考えての事だろう?」 奥さんの美幸(みゆき)さんは西田の二つ上の姉さん女房だ。県外の大学に進学した西田は大学卒業後、地元には帰らずその土地に留まり就職した。奥さんとは就職して間もなく職場で出会い、付き合って二年で結婚。翌年には子どもも産まれている。その子どもは確かもう高校生になる筈だ。現在は親子三人、会社近くのマンションで暮らしている。 俺も同じように県外の大学に進学したが、卒業後は地元に戻って就職した。実家には帰らず一人暮らしをしている。彼女がいた事もあるが、結局結婚するに至らず未だ独身。実家は自宅マンションから車で一時間程の距離にあるが、帰るのは盆と年末年始くらいだ。 大学進学で互いに県外に出てからは、忘れた頃に連絡が来て、タイミングが合えば地元で会ったりしていた。結婚前、美幸さんも交えて三人で食事をした事もあり、結婚式にも呼ばれて出席している。 結婚後は会う機会が減っていたが、何だかんだ西田は帰省する度連絡を寄越し、少なくとも年に二回は会っている気がする。 「好きな物食べれないってなかなかストレス溜まるんだよ」 西田が眉間に皺を寄せた。 昔からそのルックスで女性にモテていた彼は四十路を過ぎた今、そこに渋さが加わり世に言うイケオジになっている。不機嫌そうな顔も悔しいけど様になる。俺は呆れて溜め息をついた、その時だった。 「分かります。好きな物、我慢したくないですよね」 井橋さんの言葉に、西田が顔を上げる。 「低GIの甘味料を使ったスイーツがありますが召し上がりますか?」 「え!?是非!お願いします!」 前のめりで目をキラキラさせる西田。 俺は低GIという聞き慣れない言葉に内心首を傾げたが、西田には通じているらしい。
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