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「低GIの食品は血糖値の上昇が緩やかなんですよ。つまり、太りにくい。夜に甘いものを食べるのは罪悪感がある、でも食べたい。そんなお客様が気兼ねなくスイーツを楽しめるように、今色々試作中なんです」
舘川くんの補足説明に、俺は感心してしまった。
この店はいつでも、客の気持ちを最優先に考えてくれる。お任せスイーツがその最たるものだが、舘川くんが作るお任せのカクテルも評判が良かった。
「そうそう、お飲み物はいかが致しましょうか?」
そう言われて、俺は今だにドリンクメニューとにらめっこしている西田に声をかけた。
「ね、西田。決まってないなら俺のオススメ飲んでみない?」
「え?お前酒詳しかったっけ?」
「ここに来るようになってからハマって、ちょっと勉強してるんだ」
「ふぅん。じゃぁ、頼む」
「舘川くん、マルガリータお願いできる?」
「………!!」
舘川くんが一瞬目を見開き、俺を正面から見つめる。
(さすが舘川くん。気付いたかな…)
俺が小さく頷くと「かしこまりました」とカクテルを作り始めた。
「どうかした?」
「いや……それより、お前良かったのか?」
「何が?」
「いや何がって……家庭持ちだろ?俺はそういうのよく分からないけど、美幸さんとか息子くんとか」
「今日は実家に泊まる予定なんだ。明日日曜日だしね。美幸も友達とランチに行くって言ってたし、淳弥も友達と遊びに行くんじゃないかな?もう高校生だし、俺がいなくても二人とも適当にやってるよ」
「そうか。ならいいんだけど」
「さっき同窓会でも二次会でもあんまり話せなかったろ?話足りなくてさ」
あまり話せなかったのは、西田が他の友達に囲まれていたからだ。俺は苦笑いした。
「年に二回は会ってるだろ?他の奴らより下手したら会ってるんじゃない?」
「んー、確かに」
俺はどちらかと言えば中高より大学時代にできた友達の方が仲が良い。今日は中学校時代の同窓会だったが、西田が誘ってくれなければ多分参加しなかっただろう。
「それにしても、流石に三十年も経つと誰が誰だか分からなくなるやつもいるな。今でも定期的に連絡取り合ってるの西田くらいだけど、お前あんまり変わらないし。他の奴ら見てビックリしたよ」
「はははっ、そんな事ないよ?寧ろ藤原の方こそ変わってない」
「そうか?」
見た目も中身もごく普通で変り映えがしない俺は、逆に変化も乏しいのかも知れない。しかし西田は何故か嬉しそうだ。
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