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「うん。見た目だけじゃなくて中身も環境も変わってない。今だに独身だし」
「オイオイ、それは褒めてんのか貶してんのかどっちなんだよ」
「喜んでんの」
「は?」
「お待たせ致しました、マルガリータです」
目の前に置かれた底の浅いカクテルグラスに入っているのは、少し黄みがかった緑色をした半透明な酒。グラスの周りをぐるりと一周するように塩がつけられており、照明の光でキラキラと輝いて見えた。
「綺麗だな……」
「だろ?」
西田の表情を見て、思わず笑みが溢れる。
マルガリータを飲むのは二回目だ。口をつける。テキーラの濃厚な味わいに、コアントローの甘さ、ライムの爽やかさ絶妙にマッチし、グラスの縁に付けられた塩が味にアクセントを加えている。
「美味い」
「喜んで貰えて良かったよ。
……なあ西田。今、幸せ?」
「何だよいきなり」
「いいじゃん、答えてよ」
「幸せだよ」
「そっか、良かった。西田が幸せなら、俺も幸せだ」
ニコリと微笑むと、西田の瞳が一瞬揺れた気がした。彼が口を開きかけた時、目の前に硝子の小鉢が置かれた。
「お待たせしました。チョコレートジェラートです」
「お。美味そう!」
西田が嬉しそうに小鉢を覗き込む。見た目は普通のチョコレートジェラートだ。
「アガベシロップ、豆乳、ハイカカオチョコレートを使っています」
「アガベシロップ?」
豆乳やハイカカオチョコレートは知っているが、アガベシロップは初めて聞いた。西田も首を傾げている。
「はい。メキシコ発祥の天然の甘味料で、リュウゼツランアガベ種の植物から採取されるものです。普通の砂糖のGI値は100くらいですが、アガベシロップは25と低いんですよ。甘さも十分あります」
「へえ、知らなかった!」
「帰ったら美幸に教えよう」と西田はスマホのメモに今聞いた事を打ち込んでいる。俺はスプーンを手に取ると、ジェラートを口に運んだ。少し遅れて西田もジェラートを口にする。
「美味いなぁ!」
「うん、確かに甘いし、美味い」
濃厚な甘いチョコレート味が口いっぱいに広がる。マルガリータとの相性も抜群だった。
(さすが舘川くんと井橋さん)
食べながら飲みながら、同窓会や二次会の時に話せなかった時間を取り戻すように西田と沢山話をし、時間はあっという間に過ぎていった。
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