episode2

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「本当、奇遇だな……。汐海がそういうの好きなのも意外だった。まあ、人の事は言えないけど」  笹葉くんに指摘されて、私は気付く。自分の持っているカゴの中にBL本が入っている事と、乙女ゲームを手にしていた事を。 「この後、少し時間ある?」  表情はいつも通りの無表情だから何を考えているのか分からないけど、笹葉くんも私も、お互い知られたくない事を知ってしまった今、一度きちんと話し合わなければならないという事だろう。 「……うん、大丈夫」 「それじゃあ……三十分後、ここから少し歩いた所に《CafeBAR・Peace》っていう店があるから、そこで待ち合わせでいい?」 「分かった。それじゃあ、また後で」  何故三十分後? と思ったものの、私から離れた笹葉くんは迷っていたゲームを二つとも手にすると、今度は漫画売り場の方へ歩いて行った。 (……ああ、まだ色々見て回りたいって事ね)  かくいう私もまだ見たいものもあったので丁度いいと手にしていたゲームソフトをカゴへ放り込むと、今度はCD売り場へと歩いて行った。  そして、約束の三十分後。  この店のオーナーと知り合いらしい笹葉くんは一番奥の席に案内してもらい、私たちは向かい合わせに腰を下ろした。  平日の夜とあって店内にお客さんは数える程しか居ないけれど、お酒が入っているからか少し騒がしい。  そんな中、私たちは共にアイスコーヒーとアイスティーを頼み、飲み物が運ばれて来て店員さんが去って行ったタイミングで再び笹葉くんの方から口を開いてきた。 「さっきの店での事だけど……やっぱり、引くよな? ああいうのが好きって……」 「え?」 「俺が持ってたゲームの事だよ。汐海、かなり驚いてたろ?」 「あ、ああ、うん……なんて言うか、笹葉くんがああいうのに興味があるなんて意外だなって。だけど別に、引いたりはしないよ?」  確かに驚きはしたけれど、それはお互い様だし、別に人の趣味をとやかく言うつもりも無いから彼がそれを好きだと知っても引いたりはしない。そんな私の言葉に何故か笹葉くんは目を丸くして言葉を詰まらせていた。
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