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「あー疲れた。ただいまっと」
仕事を終えて帰宅した私は帰りがけにコンビニに寄って買ってきたお弁当を袋から出して電子レンジの中へ放り込むと、温めのボタンを押してその場から離れ、脱衣所へ行き手洗いを済ませてささっと部屋着に着替えてリビングへと戻って行く。
そのタイミングで電子レンジが温め終わった事を知らせてくれて、お弁当を取り出した私は冷蔵庫からビールを掴んでローテーブルに置いた。
「はぁ、ようやくひと息吐ける」
ソファーを背にしてカーペットの敷いてある床へ座った私がビールの缶を開けようとしていると、遠くの方から着信音が聞こえてくる。
「ん……? 電話……」
何だか嫌な予感が頭を過ぎる中、私は側に置いてあるバッグからスマホを取りだした。
「げっ、またお母さんだよ……」
表示された名前を見るなりそんな声が漏れ出るも、今ここで出なかったらまた後で掛かってくる事が容易に想像出来るので仕方なくに電話に出た。
「……何?」
「何よ、その嫌そうな声は?」
「だって、お母さんからの電話なんてろくな内容じゃないんだもん」
「あら、失礼ね。そんな事ないわよ。それよりもあなた、最近自炊はしてるの? まさか、コンビニ弁当ばかり食べていないでしょうね?」
まるで監視しているのでは? と思うくらい見事にコンビニ弁当を前にしているところを指摘されて思わず身震いする。
「う、うるさいなぁ……。そんな事無いから。それで、何の用?」
「ああ、そうそう。実はね一つお願いがあるのよ」
「お願い?」
母の急な話に、ますます嫌な予感が膨らんでくるも、そのお願いとやらに耳を傾けた。
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