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さてさて、長話もここまで。話していたら、準備なんてあっという間に終わってしまったわ。いよいよ婚約者様とのご対面。嫌よお布団に帰るわ。
まあ、マリアは逃がしてくれませんでしたけど。主に対しての忠誠心をどこに置いてきたのかしらこの人。
そんな事を心の中で言いながら、シグノア様の待つ玄関へ向かう。あぁ…今からでも風邪になりませんか??
「…イレーナ嬢」
そうですよねわかってます現実はクソだと。
「…シグノア様、おはようございます」
貴族の女性らしく、きちんと、丁寧に、カーテシーをする私。傍から見たらちゃんとした令嬢なんだろーなー。心の声は令嬢らしからぬけど。
シグノア様にリードされ、私たちは学園へ向かうための馬車に乗る。いつもこの時間は苦痛なのよね。話す話題もないし、何故かシグノア様はこちらを見続けるし。ほんとにこの人の心は分からない。
けれど、そんな1日が今日も訪れると思っていたが違った。
今日も今日とてシグノア様はこちらを見続けているのを感じながら、私は窓の外を見続ける。たまには会話でもしてみようかとシグノア様の目を見れば…
(ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ッッッ!!!!今日のイレーナも可愛すぎる!!!!天使!?天使なのかいや天使か!!!!)
「!?!?!?!?」
シグノア様の声が聞こえた気がした。けれど、彼は一切口を開いていない。ましてや、そんな変態じみたことは言わないだろう。シグノア様の事を意識しすぎて、とうとう幻聴でも聞こえたかなと思って、話しかけようと再度目を見たところ…
(イレーナイレーナイレーナイレーナイレーナイレーナイレーナイレーナイレーナイレーナ…)
「…」
気のせいだと思いたかった。けど2度も聞こえてしまったら、それはもう気のせいとは言えない気がする。彼はこんなにも変態じみていたっけか。いやいや気のせい気のせい。私ったら疲れているのかしらうふふ。
しかし、そのまま目を見続けていたせいで、聞こえたくはないことまで聞こえてしまった。
(あー…早くイレーナと結婚したい…結婚したらピーしたりピーーーしたりピーーーーーーーしたりできるのに…)
「いや思ったよりうるせぇし変態だな!!!!!」
こうして、私ことイレーナ・ベルターニャと、その婚約者シグノア・ラーツの、勘違いから始まった婚約生活、こじれまくった婚約者の暴走、なんやかんやあって結婚するまで物語は始まるのでした。いや始まらないでくれ。切実に。
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