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「ダリア様とデイジー様ですね」
「うん。……見ての通り、お姉様たちはすっごく美人だけど、私は全然可愛くないしさ。ちょっと太ってるしさ。勉強とか運動神経とか何もかもからっきしだったんだけど……でもお姉様たちは、そんな私をいつも可愛いって褒めてくれたんだ。私の事が大好きって。私のここが好きなんだよって。よその子にブスだブスだって言われることがあっても私が自分を見失わないでいられたのは、きっとお姉様たちのおかげなの」
幼い頃、自分はまるでアイドルのような扱いを受けていた。
『シンシア、今日はわたくしと遊びましょ!』
『ちょっとダリア姉様!今日はシンシアはデイジーと遊ぶのー!』
二人でシンシアをひっぱりっこ。
そして自分達のどっちの方がシンシアの良いところを知ってるのか、まるで争うように言い合ったり。シンシアはそれが照れくさくて、恥ずかしくて、でもとても嬉しかったのをよく覚えている。
『じゃあ、お姉ちゃんたち二人と一緒にあそぶ!おままごとのあと、お花つみする!』
誰に何を言われても、自分を愛してくれる人が世界に一人でもいるならそれでいい。自分のいいところや魅力を、誰かが肯定してくれるならそれだけで価値がある。
今のシンシアのポジティブな性格を作ってくれたのは、きっと彼女達の影響によるところが多いのだろう。
「だからさ。私も、人の嫌なところじゃなくて、良いところを探せる人間になろうって思ったんだ。そうやって、お姉様たちが私を救ってくれたようにね」
「シンシア様は、お二人のことが本当に大好きなんですね」
「うん、大好き。私にとってはずっとずっと、大好きな御姉ちゃんたちなんだよ」
だから、と。思い出してシンシアの気持ちが曇る。
昔はいつも、何処に行くのも三人一緒だった。でもここ最近はどうだろう。最後に三人で遊んだのは、ご飯を食べたのはいつのことだったか。
「だから……二人には、仲直りしてほしいんだけどね。どうしても、うまくいかないんだよね……」
こんなこと、スティーブに愚痴ってもしょうがないのだけれど、それでも思ってしまう。
姉達の関係は、日増しに悪化している。
跡取り問題なんてものがなければ、自分達はいつまでも仲良しの姉妹のままでいられたのだろうか。
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