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日中のお茶会こと、家庭招待会。
夜の社交界と違い、昼の貴婦人たちの交流・雑談会のようなものであるこのイベントは、貴族のそれぞれの家で持ち回りで行われるものである。
夜の社交界と比べると重要な情報交換がなされることは少ない。どちらかというと、純粋にそれぞれの家々の交流を深めたり、一瞬の貴婦人らのご機嫌取りとして開催されることが多いイベントである。
いつの時代であっても同じ。女性は、噂話が好きな者が多い。
パール子爵家の跡取り候補は全員女性なので、女性達が“結婚相手に!”と色めくことはないのだが、その反面事実かどうかもわからないひそひそ話のネタになりやすいのは事実だった。
その日は、パール子爵家が“開催担当”をする日で、庭にテーブルを並べて女性達と交流することになっていたのだが。
『そういえばパール子爵家は、殿方がいらっしゃらないんですものね。姉妹のどなたが爵位を継がれるのかしら』
ああ、またその話か、と通りがかったシンシアはうんざりすることになる。
嫌でも彼女達の噂話が耳に入ってくるのだ。
『爵位を継がれた方は、そのままこの家に留まって婿取りをされるわけでしょう?当然、それなりの地位の次男の方になるんでしょうけど、どなたを迎えられるのかしらね』
『それよりも気になるのは跡取り候補から漏れた子達がどうするのかだと思わない?まだ全員若いけど、むしろ爵位を継がなかった子ほど早く婚約者を決めなければいけないのに……まだ誰も結婚決まってないっていうのよ?まあ、嫁入りか婿取りかは跡継ぎ問題が解決しないとどうしようもないんでしょうけど』
『ねえアナ、あなたは誰が爵位を継ぐと思う?それによって、友達になっておいた方がいい相手が変わってくるでしょ?』
『ねー。特に長女のダリア様とデイジー様、仲悪いっていうし。落ちそうな方と仲良くしててもメリットないもんね』
『長女のダリア様が順当なんじゃない?ダリア様はお美しいし、学もおありだわ』
『うーん、どうかしら。ダリア様はちょっと性格が、ねえ?美人といえば、デイジー様の方がスタイルもいいし、あと性格も丸くて殿方には人気があると聞いたけど』
『三女のシンシアさんはないでしょうね。あの二人を差し置いて跡継ぎになるとはとても思えないわ』
『じゃあやっぱり二人のうちのどっちか優れた方ってこと?』
『消去法かもよ?ダリア様もデイジー様も、それぞれ難がおありなのは事実だし?』
『そうよねえ、やっぱりねえ』
『マシな方がきっと由緒あるパール家を引き継いで頑張っていかれることになるんでしょう。とはいえ、残った方に嫁の貰い手があるかどうかは……あまり年を重ねてしまわれると、ねえ?』
『し、しー!さすがに貴女たち、不謹慎がすぎるわよ、声が大きいったら!』
『ああ、ごめんなさい!』
こんな調子である。そういう話をするなら何もここじゃなくても、と思うがパール家主催のお茶会だから余計話題になってしまうのだろう。
ちらり、とシンシアはダリアとデイジーの方を見た。二人とも、あからさまに離れたところで話をしている。
心無い噂話はきっと耳に入っているはずだ。
――やだなあ。絶対後でご機嫌斜めになってるよ、もう。
その愚痴聴きはまたしても自分がやるのだ。シンシアは深々とため息をついたのだった。
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