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<4・Hypocrisy>
「男の跡取りがいないって、やっぱりそれだけでいろいろ言われるんでしょうね」
案の定というべきか、お茶会が終わった直後、不機嫌な長姉ダリアに呼び出されることになってしまった。
まだ中途半端にしか片付いていないテーブルの前、お茶をやけになって飲みまくるダリアが目の前にいる。デイジーはキッチンの奥に引っ込んでいったが(彼女は趣味もあって料理を手伝うこともあるし、食器などの位置もよく把握しているからだ)、どこかで聞き耳を立てているかもしれない。そう思うとシンシアとしても、迂闊なことは言えないのだった。
「なんていうか、考えが古いっていったらないわ。女性が後を継げるようになってからどれくらいの年月が過ぎたと思っているんだか。そもそも、男女のどちらが生まれるかどうかなんて簡単に調整できるわけじゃないし……実際は“男性側の都合”で決まることが多いのに。医学も発展して、それくらいのことはわかってきているのにね」
「そうですね。男性と女性、得意なことに差はありますけど、女性だからといってそれだけで無能扱いした時代もあったようですし。今はそうじゃないはずです」
「でしょう?……うちにイケメンの殿方がいないからって欠席した連中がいることもわかってるんですのよ。なんとも露骨。女性同士で交流を深めることも大事だというのに。あの家の連中のことは忘れませんわ。あとできっちり仕返しをしてあげないと」
仕返し。
かつての姉ならば、こんな言葉を頻繁に口にすることはなかった。
何か嫌なことがあると、すぐ報復をしたがる。そうでなければ自分の気がおさまらない、プライドが許さないと彼女は言う。そして、ことあるごとに“あの程度の連中が”みたいなことを口にする。
誇り高いことと傲慢なことは違う。
そのあたりが、社交界の者達から“パール家のダリアは性格が悪くプライドが高すぎる”と言われてしまうゆえんだと、何故気づかないのだろうか。
「安心なさい、シンシア。由緒正しきパール家は、このわたくしが責任をもって守っていきますわ。……デイジーなんかに渡すものですか」
「お姉様……」
ああやっぱり、こういう方向に話が行く。シンシアは肩を落とした。
他の人の悪口を言われるのも嫌だが、姉妹同士の悪口が一番不快であるのは間違いないことだった。昔の姉ならば、妹を貶めるようなことなど絶対言わなかっただろうに。
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