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その後も、スティーブは少し不思議な質問を繰り返した。動物の檻の前に来るたびに、シンシアに“この動物の長所は何ですか?”と尋ねてくるのだ。
元々動物は好きだし、ここは幼い頃から何度も来ている動物園なので動物たちのことも比較的よく知っている。その質問に答えるのは、個人的にはさほど難しいことではなかった。
「えっと……レインクジャクは、とにかく色が華やかだよね。見た目以外だと、情熱的なダンスが好きかなあ。求愛のためにお互いダンスを踊って、相性を確かめるのがロマンチックでいいよね。あと、オスが空気読みスキルに長けてるのもいいかなあって。相手が気がないそぶりと見せると無理に追いかけていかないのが、女として好印象というか……」
「ハウンドゴリラはやっぱりあれでしょう、あのムキムキマッチョの体いいよね!あと、すごく群れの仲間を大事にするのがいい。子育てを群れ全体で行うから、赤ちゃんがしがみついてるのがお母さんとは限らないし、なんなら父親でもなんでもないオスゴリラの背中に乗ってたりする。でもって、群れに危険が迫った時はみんなで協力して立ち向かうんだ。凄く勇敢だよね!」
「マーモルモットの鳴き声に勝るものはないよお……本当に可愛いマジで可愛い超絶可愛い!大事なことなので三回言いました!実はマーモルモットって体が丈夫なんだよね。高いところから落ちても猫みたいにくるっと一回転して着地するからそうそう大きな怪我をしないというか。それと、帰巣本能に優れていて、遠くで離しても何キロも先の素まで自力で戻ったっていう研究結果もあるんだってさ!凄い能力だよね!」
動物園は、思ったよりも長い時間を消費してしまいがちだ。あっちの檻、こっちの檻と回っているとあっという間にお昼を過ぎてしまう。
気づけば既に午後の二時。お昼にはだいぶ遅い時間になってしまったことに気付いて、慌てて持ってきたサンドイッチを芝生で広げているところだった。
目の前には、オレンジカピバラのふれあい広場がある。丘の上から、カピバラたちを撫でまわしている家族連れの姿がよく見えた。
――不思議。
気づけば、シートを敷いた芝生の上、スケッチブックを膝に乗せている自分がいる。無意識だった。このままサンドイッチを食べたら、スケッチブックが汚れてしまうかもしれないのに。
――あんなに、全然描きたいと思えなかったのに。いつの間にか……描きたくてたまらなくなってる。昔の楽しかった記憶、たくさん思い出してる。
あの長姉のダリアが一番好きなのはマーモルモットで、次姉のデイジーが一番好きなのはオレンジカピバラだった。ふれあえる動物が特に好き、という点で二人はそっくりだったのである。そこはさすが双子というべきか。
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