13人が本棚に入れています
本棚に追加
<2・Management>
父の用事というのは新しい使用人を雇用するための面接、審査を手伝って欲しいというものだった。シンシアにとっては珍しくもなんともない用事である。
我が家の使用人は募集をかけることもあるが、殆どが“我が家で経営している孤児院から雇い入れる”ことが多い。パール子爵家は慈善事業にかなり力を入れている。近隣の孤児院で大きくなってきた子供達を、独り立ちを助ける意味もこめてメイド・執事・警備員などの仕事で雇うことが少なくないのだった。
そんな時、父はシンシアに選別を手伝って欲しいということがある。多分、シンシアが“そういうこと”を得意としているからだろう。
「おお、シンシア。すまんな、急に呼んでしまって」
大柄な父は苦笑いしつつシンシアの頭を撫でた。昔からのクセだ。父はシンシアがもう十六歳だというのに、幼い頃と同じように宥める時、褒める時こちらの頭を撫でるのである。
甘えん坊と言われるかもしれないが、シンシアもその感触が嫌いではないのだった。
「面接の予定日は明日のはずだったんだがな、儂の仕事の都合で、明日はできなくなってしまって。急遽、今日執り行うことにしたんだ」
「ああ、道理で」
「とりあえず儂の方で三人ほど候補者を選んだので、シンシアにも手伝ってほしい」
「わかりました」
父はそのまま流れるようにシンシアに書類を手渡してくる。老齢となった執事が二人ほどやめてしまったので、その穴埋めに新しい執事候補を雇いたいというのもあったのだろう。今回は全員男の子だ。
ふむ、と書類をざっと眺めてシンシアは考える。
――全員、かなりタイプが違うなあ。……他に候補がいただろうに父上が残したってことは、多分彼等に光るものを感じたってことなんだろうけど。
ちなみに我が国の場合、孤児院には二十歳の誕生日までしかいられないことになっている。ゆえに、二十歳になる前に全員が仕事を探さなければいけない。
大きくなってきた子供達を我が家で雇い入れているのはそのためもある。彼等が最終的にどんな進路を取るにせよ、我が家で鍛えることで確実に就職活動の援助となるためだ。同時に、賃金も発生するのでいずれ一人暮らしをしたり、起業するための資金も作ることができるという塩梅である。
元を辿ればメイド頭のハナも孤児院出身だったと聞く。祖父の代で孤児院から雇ったのが彼女で、優秀さと本人の適正もあってそのままうちのメイドとして長年働いてもらっているというわけだった。
「この部屋だ、三人とも待っている。質問は好きにしていいし、最終的な判断はシンシアに任せる」
新しく雇う使用人を決める。
最初のコメントを投稿しよう!