<2・Management>

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 結構重大な任務なのだが、父はそれをシンシアに委ねたがる傾向にあった。確かに人間観察は好きだし、人を見る目にはそれなりに自信があるけれど果たしてそれでいいものかどうか。中にはスパイとか暗殺者が、なんてこともあるかもしれないのに(孤児院出身でそういう人間はほぼないだろうが)  そこは、父の執務室の一つだった。  執務机の前に三つ椅子を並べて、椅子にそれぞれ一人ずつ少年たちが座っている。シンシアはいつも通り、執務机の隣の少し大きな椅子に座った。面接の補佐をする時の、いつも通りのポジションだ。 「えーっと、皆さんこんにちは。面接の補佐をすることになりました、パール家三女のシンシア・パールです。どうぞよろしく」  シンシアが頭を下げると、三人の少年はそれぞれ“どうも”と言いながらおじぎをしてきた。 「まずは一人目。アーサー・マイルドさん。十七歳。さっきお父様にも話したかもしれませんが、私にも得意なことやこちらの仕事を志望した動機をお話ください」 「はい」  一人目のアーサーは、明るい茶髪に茶色の目の、背が高い少年だった。この中で一番年長者らしく、落ち着いた雰囲気がある。まっすぐこちらを見つめて話し始めた。 「将来、僕は学校の先生になりたいと思っています。そのためには、多くの経験を積むのが大切で……だから、こちらで執事として勤務して、貴族の皆様のマナーなどをいちから学びたいと思いました」  シンプルだが王道の動機だ。アーサーの孤児院での記録を見るに、かなり真面目で品行方正な人物であることが覗える。多くの子供達に勉強を教えており、皆のお兄さんとして慕われる人物だったようだ。  彼と親しい人物、の中に“オットー”の名前を見て、シンシアは眉をひそめる。アーサーたちの孤児院は自分も何度も顔を出したことがある。十四歳オットーは孤児院でもかなりの問題児だったはずだ。両親に捨てられたことで自暴自棄になり、過去何度も孤児院を脱走している。先の質問でも、アーサーはオットーのことをかなり気にかけている様子だった。学校の先生を志した理由には、彼の存在が大きいのかもしれない。 「次。二人目、ジョー・カッターさん。十六歳。あなたがうちの使用人を志望した理由は?」 「あー、えっと……」  二人目の黒髪黒目のジョーはアーサーほど背が高くなかったが、やや筋肉質な体格だった。特に、足の筋肉はなかなかのものである。ズボンごしに見ても、ぱつんぱつんに筋が張っているのが見えるほどだ。  そんな彼はやや困ったように頭を掻いて、明け透けなんですけど、と言った。
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