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反面、心臓に重たい病気を持っているので、時々体調を崩してしまうこともある。何より男なのに力仕事が得意ではないのがコンプレックスであるようだ。迷惑になりたくない、というのはきっと本当のことなのだろう。
「どうかね、シンシア」
父がこちらを見る。
「三人とも、儂がよく知っている子たちだ。根が素直で優しい子ばかりであるのは保証するよ。だが、うちの仕事にどこまで適正があるかはわからんし、それにスティーブはあまり仕事に乗り気ではない様子でな。そのあたりを踏まえて、お前ならどのような判断を下すかね?」
「そうですねえ」
シンシアは、己が一番得意とすることを熟知していた。それは。
「私は……三人とも素晴らしい素材ではありますが。今回雇うのは、ジョーさんとスティーブさんにするべきと考えます」
「!」
人の本質や、長所を見抜くこと。
美人でもなく、とりたてて学校の成績が良いでもなく、家事が得意なわけでもない。そんなシンシアが唯一、己の誇らしいところだと思っているのがそれだった。
「アーサーは不適格だと?」
父が驚いたようにシンシアを見る。一人選ばれなかったアーサーも、名指しされたジョーとスティーブも困惑した顔でこちらを見ていた。
「不適格なのではありません。今は、まだ彼は孤児院にいた方がいいと判断しました」
「何故?」
「オットーのためです。アーサーさん、貴方は将来教師になりたいと思っている。そして我が家で経験を積みたいと考えている……それは素晴らしいことです。でも、実のところ教師になるため学校に通いたいならば、我が家で仕事とは別に援助が可能なのですよ」
自分が何かしでかしてしまったのでは、と思っているのであろうアーサーにシンシアは微笑む。彼が悪いのではない。彼には、ここで執事をするよりも前にやるべきことがあると思っただけだ。
「資料によると、貴方が来てからオットーの問題行動は激減しています。貴方の行動が、オットーの心の支えになっていることの表れだと思うのです。貴方は本当は、オットーが独り立ちするのを見守ってから就職したいのではないですか?」
「……すみません」
「謝らなくていいのです。貴方の人を想う優しい心、とても立派です。きっと素敵な教師になれるでしょう」
シンシアがそう告げると、アーサーは少し泣きそうな顔で俯いた。次に、とシンシアはジョーに目を向ける。
「ジョー。貴方、フットボールの選手になりたいんでしょ。だからそのための資金をためたい」
「え、わ、わかります?」
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