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<1・Sisters>
パール子爵家の三女、シンシアには双子の姉がいる。
長女のダリア、次女のデイジーだ。姉たちは顔立ちはそっくりだったが、ダリアが母の赤い目を、デイジーが父の青い目を引き継いだので見分けることは容易だった(ちなみにシンシアは青い目である)。
二人はシンシアより四つ年上。それもあってか、幼い頃から妹として溺愛されてきた自覚がある。シンシアはダリアやデイジーと違ってけして美人と呼べる顔立ちではなかったが、姉たちはいつもシンシアのことを可愛い可愛いと大事にしてくれたのだった。
『シンシア、今日はわたくしと遊びましょ!』
『ちょっとダリア姉様!今日はシンシアはデイジーと遊ぶのー!』
多分、幼い頃から空気を読むのが比較的得意だったというのもあるのだろう。そういう時、シンシアは苦笑いしてこう言うのだ。
『じゃあ、お姉ちゃんたち二人と一緒にあそぶ!おままごとのあと、お花つみする!』
自分達は仲良しの姉妹だった。ずっとずっと、その時間が長く続くとばかり思っていたのである。
いつからだろう。姉たちの関係が壊れ、ギスギスと互いに突き刺すような言動ばかり繰り返すようになったのは。
この国で、女性が家督を継げるようになってから久しい。さらに、長子ではなく、より優秀な子供に家督を引き継がせる風潮が根付いてからも。
それは、本来ならとても良いことであったはずだ。長男長女だあらではなく、より家を守るに相応しい人間が家督を継ぐのは。それなのに。
『お前たち三人の中で、より優秀な者に家督を継がせようと思っている』
ある日父が、はっきりと自分達の前でそう宣言した。そして周囲の者達も、それとなく私達姉妹を比べるような発言をし始めたのである。
だからだろう。姉たちが、徐々にその空気に染まり始めてしまったのは。つまり。
『ねえシンシア、貴女は家督を継ぎたいなんて気持ちはないのでしょう?だったら、わたくしを推してくれるよう、お父様に進言してくださらない?』
『え』
長女ダリアがそう言った時、シンシアは背筋が凍ったのだ。
『だってデイジーってば、もう二十歳になるのに喋り方も幼稚、考え方も幼稚。パール家を守っていくのに、あまりにも相応しくないでしょう?わたくしの方が絶対適任だもの、ねえ?』
ああ、聞きたくなんてなかった。
大好きな姉が、互いの悪口を言う様なんて。
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