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【このエッセーについて】
このエッセーについて最初に説明する。
武田武彦をご存知だろうか?
戦後、ミステリー専門誌「宝石」の編集長を務め、その後は児童向けミステリー作家として活躍した。
その武田武彦が、1952(昭和二十七)年九月号より翌年八月号まで「少年少女 譚海」に連載した『人間豹』に関するエッセーである。
原作は江戸川乱歩が戦前に発表した同名の通俗長編であり、元々は大人向けに書かれた作品である。武田は登場人物の設定を大幅に変更。ストーリーも変え、児童向けのミステリーに改作したのである。
武田が改作した『人間豹』は児童の間で大変な人気を呼び、連載終了後、再編集の上、ポプラ社から刊行された。
最終的には「少年探偵 江戸川乱歩全集」第四十四巻としてロングセラーを誇ることとなる。
ところが武田武彦こそ、ポプラ社の児童向け改作本来の執筆者であるにも関わらず、別人の名前が改作者として紹介され、そのうえ、
「雑誌連載も武田の執筆ではない」
「武田の雑誌連載の単行本化を乱歩が拒否して別人が新たに執筆した」
など武田を貶めるような文章が堂々と発表されるなど、今もって正当な評価を受けているとは云えないのが現状である。
このエッセーでは、現在では幻となった武田武彦執筆の『人間豹』の謎に迫りたいと思う。
併せてポプラ社に改竄される前の「少年少女 譚海」に連載された
「原作・江戸川乱歩
脚色、文・武田武彦
画・成瀬一富」
の『人間豹』を七十数年ぶりに紹介する。
この作品から、ポプラ社刊行の『人間豹』が生れたのである。
2024年乱歩の逝去の日に記す
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