16人が本棚に入れています
本棚に追加
消えた弘子
閉店時間になると恩田はおとなしく店を出て行った。神谷は恩田が気になり、この不気味な男が大通りでタクシーに乗ると、自分もタクシーで後を追った。恩田は人家もまばらな田舎道で下車して徒歩で歩き出した。神谷はそっと後をつけていく。一匹の犬が恩田にむかってけたたましく吠え始める。恩田は犬を掴むと、一瞬のうちにその口を引き裂いて絶命させた。
「おい、すぐに帰りたまえ。おれは君なんかに干渉されたくないのだ」
神谷は恐怖のあまり、その場から逃げ出した。
数日後、恐る恐るカフェ・アフロディテを訪問すると、弘子はずっと無断欠勤を続けていた。両親も必死で娘の行方を追っているらしい。
神谷は恩田を目撃した武蔵野の森へ向かった。そこには西洋館が立っていた。
西洋館の庭に丸めたハンカチが飛んできた。ハンカチからは見覚えのある指輪が出てきた。ハンカチには、
<助けて、ころされます>
の文章が書かれていた。弘子が助けを求めてハンカチで指環を丸め、外に投げたのに違いない。神谷が屋敷を訪ねると髪も髭も真っ白な背広姿の老人が現れた。恩田のことを話すと、それは息子だと言う。だが不思議な紳士は、弘子のことを訪ねると一緒に家探しをしようと持ちかけ、巧みに神谷を一室に閉じ込めてしまう。
そして神谷の目前で、恐ろしい光景が展開する。
最初のコメントを投稿しよう!