第10章 童貞、処女に殺される?

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第10章 童貞、処女に殺される?

 光の存在は、「黙れ」とだけ言って徳男の言葉を遮ると、徳男の一切の身体の自由を奪い、金縛にした。  ほぼ同じくして、アイアン・メイデンはその重々しい扉をギイと開いた。 「お、おい! ヤメロ、やめてくれ!」  冷たい鉄の棺桶の中から、異常な重力が発生し、徳男の身体を目に見えぬ力で引っ張ってきた。 「ちょ、話が違うじゃんか。オレ、あんたの下僕になるって約束したって。死ぬとかイヤだって言ったじゃんか!」  身体の自由を奪われて、鉄の処女に吸い込まれつつありながらも、徳男はわめき続けた。 ―あー、うるさい、近所迷惑だろうが。大人しく入れ。  光の存在は、冷たく言い放った。 「近所なんてあるか! このまま串刺しかよ! チカラ与えるどころか、生死不明になるのはオレじゃねえか!」  もがこうにも、全くもがけない。  全身の自由が奪われ、指先一つも動かせないのだ。 ―これから、ポンコツの「闇のチカラ」を圧倒的に引き出す作業をする。ただし、この装置に耐えられればの話だ。 「ぎゃあああああああああ、やめてくれーーーーー」  バチッ  徳男は、有無を言わさず鉄の処女に「収監」された。 「うぎゃー、出せ、出してくれ!」  野垂れ死にするつもりではあったが、串刺しにされて死ぬのは「マジごめーん」と、徳男は思っていた。ところが、光の主はその叫び声には反応しない。 ―良いか。今から適合審査を行う。無数の極太針が飛び出し、ポンコツの全身をくまなく突き刺す。それに耐えられるかどうかの審査だ。  あり得ない無茶な審査を通告された。  徳男は目をまん丸くして、口をあんぐりと開けた 「あほかー! 全身針に刺されたら死ぬに決まってんだろうが! 嘘つきやがって! 死ね! 死ぬのはお前だ! オレの代わりに串刺しにされろ!」  徳男は、散々悪態を付いてみたが、その声は完全スルーされた。 ―黙れ、煩い。適合審査と言っておろうが。適合すれば、そなたの「闇のチカラ」は数倍、いや、あるいは数十倍にもなるのだ。 「適合しなかったらどうなるんだよ!」 ―ハチの巣になって死ぬだけだな。 「ほら、結局死ぬやんけ! しかもかなり痛そう! 出せ、出せよ、嘘つき!」 ―しつこいぞ、下等生物。ならば始める! ヴァジュラ!!  光の存在が、なんらかの合図をすると、鉄の処女の内側から、無数の極太の針が飛び出て、頭のてっぺんから爪先まで、徳男の身体をくまなく突き刺した。  バスッ、ドスドスドス 「うぎゃーああああああああああああ! 童貞なのに、処女に殺される!」  徳男が発した断末魔のその叫び声は、鉄の棺桶の中で虚しくこだまするだけだった。  その時の激痛を表現するならば。  生爪をペンチでバリバリと剥がされ、麻酔なしでバキッと歯を抜かれ、目を見開いたまま眼球をくりぬかれ、金〇をライオンに噛み千切られるほどの激痛だった。  徳男はそれに耐えていた。  いや、耐えざるを得なかった。 「うぎゃああああああああああああああ! は、やく、こ、ころせ!」  そう思いながらも、心の中では、 (ああああああ、童貞と処女の初めての交わりって、こんなに痛いんだ)  などと、下世話な下ネタを思いつく自分に思わず笑いが出た。 (あは、オレって天才……)  そう思った時、なぜか急に痛みが和らいだ。 (ああ、これが死ぬ時に感じる幸福感って言うヤツなんだな。結局、オレの人生って、ゴミだったな。ママに、お別れ言えなかったな……。つーかオレ、サナダムシに転生するのか、イヤだな……)    再度絶望したその時、徳男は全身を幸福感に包まれながら意識を失った。  どれだけの時間が経ったのか。  パカッ  ドサッ  アイアン・メイデンが開き、徳男はその場に倒れ込んだ。  なぜか、全身が粘液まみれだった。 ―ほう、耐えおったか。ならば、余の使命も果たせるであろう。目覚めよ、悪を超えた「超悪」となり、闇の究極パワーを宿した我が下僕よ!  徳男は、四つん這いになって、キョロキョロとあたりを見回した。 「ん……あれ? オレ、生きてる?」
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