第18章 コダマの正体

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第18章 コダマの正体

 それきり、コダマの声は聞こえなくなった。 「死んじゃったのかな」  徳男と明美は、その小屋が燃え落ちるまでずっと見守っていた。 「さぁ。でも、倒さなければ殺されてたからね。しょーがないよ」 「そ、そうね。でも、もしさ。死体が発見されて、うちらが犯人扱いされたら、どうしよう」  明美が不安そうに徳男に言った。  徳男は徳男で、とにかく自分の身に降りかかったことに対して、必死に目の前のことを片付けただけで、特に難しいことなど考えていないのだ。 「キレイね……。小学校の時の、キャンプファイアーを思い出したわ。あの時は、楽しかったな。何も考えずに、ただただ、楽しかった…」  明美がボソっと呟いた。燃え盛り、崩れ落ちる寸前の小屋をぼんやりと見続けていた。 「え? あ、そうだね。言われていれば、キャンプファイアーみたいだな」  徳男は明美の感想に、ただ単に相槌を打っただけだった。  夜が明けるころ。 ―あー、ポンコツ。ご苦労だった。言い忘れたが、お前のチカラは太陽が出ている間はほとんど失われてる。硬質化とか、パワーアップとか、もちろんないから。間違っても腹とか刺されるなよ。マジでしぬから。じゃあの。  ライトマンの声が響いた。 「はぁ? マジか。んじゃ、昼間はただの黒タイツニートってだけかよ」  むろん、明美にその声が聞こえるはずもなく。 「え? ロデムどうしたの? 幻聴?」 「あ、いや。何でもない。ひ、独り言だよ」  樹海にも朝の光が差し込んできて、明美の横顔もはっきりと見えるようになった。  夜が完全に明けたころ。 「火、消えたな。ちょっと、死体があるか見て来る。ていうか、それ回収することがオレの仕事。らしい」  明美が首を傾げた。 「え? それ何の仕事? 結局、ロデムが殺したことになるんでしょ?」 「え、ああ、そう言う事になるかな。でも、あいつ、人間じゃないっぽいし。殺人になるのかな?」  明美も、「人間じゃない」ってことにだけは同意した。 「正当防衛が成り立つんじゃないの? 殺しちゃったから、過剰防衛か」 「いや、ちょっとよく分からないけど。ていうか、オレ殺されかけたし」  明美は、そうだね、あんた弱いもんねと、笑っていた。  徳男は、まだ火がくすぶる小屋の焼け落ちた跡へと入って行った。 「いや、まだ熱いな。ていうか、この辺か? 熱っ!」  まだ熱を持っている瓦礫をよけながら、コダマの「死体」を探した。 「ん? 何だこれ?」  瓦礫の下に、真っ黒に焼け焦げた人の形をした木炭が落ちている。  全長は1メートルほどに縮んでいた。 「何だ? 炭? これが、あいつの正体か?」  それは、まるで生命力を失い、焼けただれたピノキオのようだった。見た目は、焼けた丸木を組み合わせた簡素なものだ。
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