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第21章 初デート?
一応、話はまとまったが、まだ朝っぱらである。食糧のあった小屋は全焼、食べるモノがない。
ぐうううううう
どちらともいえず、腹が鳴った。
「あー、ほっとしたらお腹すいたわ。ロデム、何か買ってきて。ついでにタバコも」
ほぼ奴隷扱いである。
本当に自殺しようとしていたのだろうか。
「タバコ吸うんだ。ていか、買って来てって言われても、こんな森の中じゃ。夜まで待ってくれれば、なんとか」
明美は呑気に構えている。
「ふうん、じゃあ夜まで待てばいいのね。せっかくだから、樹海の中、散歩でもする?」
散歩でもする―?
それってもしかして?
徳男の頭の中で、一つの妄想がモクモク、ドーンと湧き上がって来た。
(これ、オレの事、誘ってる? こいつ、オレに惚れたか?)
勘違い甚だしいのだが、童貞ヒキニートの想像力など、この程度であろう。
ドキドキ、ドキドキ
徳男の人生史上、最大の心拍数をあっと言う間に更新した。
「ん? どうかしたの?」
本来であれば、顔面が真っ赤になっている上に、ニヤケが止まらないのであろうが、のっぺらぼーの上に全身真っ黒なので、全く無表情の冷静キャラに見えるのが不思議だ。
「え、えっと。手とかつないでってこと?」
その興奮が、思わず分不相応な申し出をしたことに、この世間知らずのヒキニートは知らない。
その言葉は、明美を困惑させ、怒らせるのに十分だった。
「は? 何言ってんの? 何であんたみたいな黒タイツと手つながなきゃいけないのよ? 彼氏でもないのに。キモっ! マジでキンモー!」
がーーーーーーーーーーーーーーーーーーん!
当然である。当然の、ごくごく当たり前の反応であった。
むろん、徳男は完全フリーズした。
「えっ、あ、その、え?」
固まった上に、どう返したら良いのか分からなくなった。
天国から地獄へー。
秒で転落した気持ちだった。
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