7人が本棚に入れています
本棚に追加
第24章 チューして💘
明美は、顔を捻じ曲げながらも徳男の話を聞いていた。
「で? 何の褒美が欲しいのよ」
「あ、あのさ。そ、その」
よくよく考えてみると、相手は一回りも年下の若い女である。
徳男が全身黒タイツになっていなければ、明らかにパパ活か?と思われるような間柄と光景である。
「だから、さっさと言いなさいよ。あんたのそういうところ、マジでイラつくんだけど」
「じゃあ、言うよ。ちゅちゅちゅ、チューして💘」
思わぬ一言に、明美は目が飛び出るほどの驚きの表情をした。
「はぁ? チューしてって? あんた口ないじゃん。ていうか、口ないのに喋れるの不思議だわ、今更だけど」
意外に冷静な突っ込みだった。
「い、いや、口じゃなくて良いんだ。ほっぺとかに、ちゅって。よくあるやつでさ」
徳男の精神構造というか発想の根本は、漫画とアニメの二次元世界である。
その二次元の世界で見た光景をやってほしいというのが、徳男のお願いなのだ。ところが、リアルの世界でしか生きてこなかった明美は、腑に落ちない表情をした。
「あ、そ。そんなんで良いのなら、良いわ。ただし、一回だけ。それが終わったら、永遠に他人になること。良いわね?」
要するに、一度ほっぺたにキスをしてもらったら、捨てられるということだと、さすがの徳男でも理解することができた。
しかし、今の状況、元々の自分を考えても、女子にキス(あくまでホッペだが)してもらえることは、人類が月に到着するほどの画期的な出来事なのだ。
「わ、分かった。やる、やるよ。で、誰をやれば良いの?」
最初のコメントを投稿しよう!