第0章 無敵ニート、その名は「徳男」

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第0章 無敵ニート、その名は「徳男」

 徳男は、目を疑った。  目の前にいる光り輝く中にいる神々しい存在。  それは、神なのか悪魔なのか。  この際、それがどちらかはどうでもいい。 「あの、あなた様は、オレ……。いや、僕をどうするつもりですか? このまま、殺してくれてもいいんですが」 ―自ら死ぬのは自由だが、お前はその場合の転生先を知って、その様な事を言うのか? 「いや知らないですけど。まあ、両親に見放されて。働いたこともないし、帰ることもできないんで、このまま死ぬしかないって。まあ、どうせ生まれ変わってもニートするんで、何に生まれ変わっても良いです」 ―ほう。では、死を選ぶが良い。ただし、転生先は「サナダムシ」だ。 「さ、サナダムシ? 虫っすか? サナダムシ……? それって確か」 ―左様、寄生虫だ。下等生物であるポンコツにぴったりではないか。 「はあ? 冗談はよしこさんとはこの事っすよ。親に寄生しているからって、本物の寄生虫になれって? ふざけるのはよしこさんっすよ」 ―よしこさん? 下等生物のくだらぬ戯言か。それがイヤならば、余の下僕となって、働くが良い。 「下僕っすか。初音ミクちゃんの下僕になるのなら良いけど。どこの誰かも分からない存在の下僕とか、ヤダなあ」 ―左様か。ならば、サナダムシにしてやろう。 「ちょ、ちょっと待ってって。どっちか選べと言われたら、そりゃ下僕の方がましだけどさ」 ―分かった。もはや話す価値も理由もない。余の下僕としてやろう。余の「使命」を果たすのだ。 「使命? 使命って何ですか?」 ―この世の悪を超える「最悪」いや、「超悪」となり、悪を滅するのだ。 「最悪? 超悪? 超熟なら知ってるんすけど、パンの良いヤツですよね。ていうか、最悪になれとか言われても、今の時点が最悪なんで。強いて言うなら、もうなってますけど、何か?」 ―くだらぬ戯言をほざくな。この世で最も禍をもたらす堕天使ルシフェルを超える、悪魔を超える「超悪」になれ。でなければ、今この場でサナダムシにする。 「だから、サナダムシはイヤだって。ていうか、急に堕天使だの悪魔を超えた存在になれと言われてもなあ」 ―なに、たやすいこと。見よ、下等生物!  あたりが、強烈なフラッシュが焚かれた様に光り輝いた。  その時の光景が、安納徳男、略して安徳が見た、「人間」だった時の最後の記憶だった。
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