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第33章 ついでに助けるってか?
「ちょっと、すみません。いま、『ついでに』って言いました? ついでに子供を探すって、どういうことですか!」
母親は、息子を抱き締めながら徳男を睨み付けた。
「だってオレ、別に消防士とかじゃないし。何か、今度は火のチカラを持つヤツを探して連れて来いって言われてるだけなんで」
徳男は、世間との接点が極めて乏しいため、ある意味正直なのかもしれない。
または、相手の立場に立って発言すると言う事が、できないのだろう。
その言い訳は、母親の怒りをエスカレートさせるのに十分だった。
「あなたは鬼ですか! 私の子供が、逃げ遅れているというのに」
それこそ鬼の形相で、母親は徳男にはげしく迫ってきた。
「いや、そんなこと言われても。ていうか、子供置いて逃げて、見捨てて来たんでしょ? それを何でオレが……」
バカッ
「あんた、いい加減にしなさいよ! もう、すみません。コイツ、世間知らずなもので、こんなコスプレしてるんです。コイツが責任持って、お子さんを探してきますから、ごめんなさい!」
痺れを切らした明美が、徳男を殴りつつ、母親をなだめた。
「……そうですか。うちの子は、小5の女の子で、綾菜って言うんです。塾に行ってるはずで、私の父に迎えに行ってもらってたんですが。その途中で、爆発が起こって」
慌てて逃げて来たのだと打ち明けた。この母親はシングルマザーで、実家で子育てをしているのだという。
「だから、やむなくはぐれたという訳ですね。ほら、ロデム。あんたが言うみたいに見捨てたんじゃないんだから。謝んなさい!」
「あ、はい。すんません」
徳男は上半身が水平になるまで体を折り曲げた。
とても謝っている様には見えなかったが、徳男は思い足を引きずって、火の海へと向かって行った。
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