第37章 バカの丸焼き

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第37章 バカの丸焼き

 徳男が、ムラの正体に感づいた時。 「ああ、そうだよ。お前は本当に鈍いヤツだな……」 「鈍いって。そりゃそうだ、引き籠りのニートだもん」 「何? 引き籠りのニート? なんだそれは」  温厚な顔を保っていたムラの顔が、一変して険しくなった。 「引き籠りニート知らないって。世間知らずだなあ」  ヒキニートに世間知らずと罵られたムラは、何か気に障ったらしい。  ズイと、徳男に顔を近づけた。 「世間知らず? ああ、この下等生物で溢れた薄汚れた世界のことか? どうせ今から我々が浄化して、光に満ち溢れた世界にするのだ。そんなものは知る必要はない」  この発言。  さすがのニート徳男も、驚きを隠さなかった。 「え? それって、世界征服とかするヤツ?」 「征服? 違うね。浄化だ……。それにしても、こんなバカに、コダマが殺されるとは。信じられん! まず、お前から浄化してやる!」  ムラが両手を天高く上げると、その両掌が松明の様に燃え上がった。 「は? お、お前、あれか。あれだな!」  驚きのあまり、徳男は「光の一族」という単語すら発せなかった。 「今ここで、お前を一瞬で灰にしてくれるわ!」  ボッ 「うぎゃああああああああああああああああ!」  徳男が、ムラからもらった服が、一瞬で燃え上がった。  どういう理屈なのか分からない。  だがとにかく、徳男はまるでガソリンに火を付けられたスタントマンの様にあっと言う間に火だるまになった。 「ははは! 良く燃えるわ! バカの丸焼きの出来上がりだ!」
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