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第38章 生きたまま火葬
ムラの両手が、燃えただけで、徳男の服が燃え上がった。
その原理、理屈は分からない。
だが、とにかく徳男の全身から炎があがり、生きたまま燃やされている。
「わはははは、良かったな。お前の様な偽善者、火葬されるまでもない。生きたまま火葬できて、手間が省けただろう!」
ムラの掲げた両手は、赤々と燃え続けている。
それと共に、周囲の燃え盛る建物の炎の勢いが、まるでガソリンをまき散らしたように燃え上がった。
「うぎゃあああああああああ」
徳男は、いつか見た動画を元に、地面を転がって火を消そうと試みた。
「あはははは、面白い、面白いぞ! 人間が丸焦げになって、痛み苦しむ姿を見るのは愉快この上ないわ!」
真っ赤に燃え上がる富士宮市の地獄に、その悪魔の様な声が響き渡っている。
「オレは、全てを焼き尽くすこの炎を自由に操れる! このちっぽけな街を燃やした後は、この島の全ての町を燃やし尽くしてやる! わはははは!」
そんな声が、ぼんやりと徳男の耳の中に入ってきた。
(街を燃やすとかの前に、オレが燃やし尽くされるわ。つーか、このままだと、死んじまう)
ゴロゴロと転がりながら、自分の火を消そうとした。
そして、コダマの家でも釜の中で燃やされそうになったことを思い出していた。
(つーか、何でオレ、何回も丸焦げにされなきゃならんのだ……)
とはいえ、冷静に考えてみると、さほど熱くない。
―おい、役立たず。何をしている。さっさとホムラをぶち殺せ
不意に、ライトマンからの声が聞こえた。
「あ? あいつ、ホムラって言うのか。善人ヅラして、結局悪者じゃんか」
―だから何だ? お前は言われた役目を果たせばいいのだ。
「いや、こんな火だるまでどうやってあいつを倒せって言うんだよ!」
文字通り、火の海の中で火を自由に操れる火の悪魔に、火だるまが挑んだところであっという間に燃やし尽くされるだけだろう。
―早く気付け。その姿、1万度までは耐えられるのだ。お前の黒く淀んだ薄汚い暗黒パワーで、火のチカラに打ち勝て!
ライトマンは、かなり無責任なことを言った。
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