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それからしばらく経った日曜の昼間
彼に呼ばれついて行った先にとまっていたタクシー
乗り込むと助手席にキレイな大人の女性
この人のことは気にしないでいいから、と彼は言いました
いつもの場所に居なかった私をわざわざ仲間に探させてまで連れ出された私は、どこかいつもと違う空気を感じていました
野生の勘のように
腹をくくって思考をクリアにと、そう思っていました
着いた場所はボロアパートで階段を上がって入った部屋は汚く散らかっていて、小太りで冴えない男の人が一人
助手席のお姉さんはタクシーから降りませんでした
彼は言いました
「しばらく戻れないんだ、この人は俺の兄貴分みたいなもんやから、しばらくここで面倒見てもらえ、何でも好きな物買ってもらって美味しいもん食わせてもらえ、大丈夫やから」
私は黙って頷いて彼を見送りました
しばらくするとその男は私に近寄って、異常に近寄って、私の顔を撫でました
私は咄嗟に「私に手を出したら彼が黙ってないよ!」と恫喝しました
その人は言いました
「おまえ、何も知らんのな、あいつヤクザの女に手を出してこれから二人で飛ぶんやぞ!お前はその資金のために売られたんや、俺にな!」
そしてニヤリと笑いました
愛なんて私には分からなかった
生きるために彼といた
ここから逃げよう、そして皆に伝えよう
彼の裏切りを。
私は言いました
「話は分かりました、私はここでしか生きていけないんですよね?なら着替えも欲しいしお腹も減ってる、そのあとでも良いでしょう?」
男は上機嫌で準備するから待っとき〜と隣の部屋に行きました
私は全力で階段から転げ落ちそうになりながら逃げました
ここがどこかも分からないから
タクシーを拾って仲間のもとへ
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