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晴天
1年後
8月15日木曜日13時15分
福岡市城南区1-1松山中央公園の側道
娘と共に車椅子に乗って彼女を待つ。
「空が青いな」
雨のにおいが全くしない。
毎年決まって今日この日のこの時間は雨が降っていたのに空を見上げても雲1つ無い晴天で雨は降りそうもない。
「お父さん、誰を待っているの?」
「女の人を待っているのだけどね、どうやら来そうも無いね」
「どんな人? 美人?」
「そうだね、綺麗な人だよ」
「その女の人の事が好きなの?」
「好き? そうだね、好きだったのかもしれないね」
「私とどっちが好き?」
「君の方が100万倍大好きだよ。それに君がいてくれないと僕は何もできないしね」
「お父さんのこと一生面倒を見てあげるね」
「君を娘にして良かったよ」
「あ、そうだ、今日の朝ね、起きる前に夢を見たの」
「どんな夢だった?」
「黒髪の女の人が出て来てね、お父さんの事を恨んでいるって言ってたわよ。それとお父さんの事を一生見てるって、償いは終わって無いって、逃がさないって、──嫌いだって」
「そうか・・・」
「どうしてお父さんは嬉しそうな顔をしているの?」
「それがね、彼女が今どこにいるのか分かった気がしたんだよ」
娘が僕の首をゆっくり絞める。
そしてすぐに緩めてニヤリと微笑む。
「なあ、僕はいつか君に償いきれるだろうか──」
娘が僕の顔を抱き寄せて胸に押し当てた。
そしてほんのり雨のにおいがした。
END
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