参 専属騎士選抜試験

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(一瞬でも勘違いしちゃって、恥ずかしい…)  フィオナは思わず赤い顔のまま俯いた。 「じゃあフィオナは今、夢に向かって歩いている途中なんだね」  しかし、シャシャに声を掛けられたことでフィオナはすぐに再び顔を上げた。 「う、うん…そういうことだね」  気を取り直してフィオナは笑顔を浮かべると、シャシャに頷いてみせる。 「試験に合格して、皇子専属騎士になって、後見人を見つけて、そして男爵位を継ぐ」  フィオナは一つひとつ指を折りながら答えていった。 「その後は?」 「え?」 「爵位を継いだ後、どうするの?」  シャシャにここまで自分のことで興味を持たれるとは思っていなかったフィオナは驚きつつも「それは…いつか領地に帰るつもりだよ」と答えた。  するとシャシャの青い目が輝く。 「…それはどうだろう?」 「え、なに? シャシャ」  シャシャの呟いた言葉がよく聞こえずにフィオナが聞き返すと、彼は首を横に振ってから「何でもないよ」と笑顔を浮かべた。 「フィオナ。明日の最後の試験、頑張ってね」 「うん、シャシャも…」  明日はいよいよ最後の試験だ。実技だと聞いている。 「もう自分の事を下げて周りに嫉妬したり、後ろ向きに考えたら駄目だよ」 「う、うん…」  フィオナは先ほどの自分の醜態を思い出し、カァッと顔を赤くした。シャシャはそんな彼女の手をギュッと握り締めたかと思うと、隙だらけなフィオナの頬にキスをする。 「シャっ…!?」  尋常じゃないほどに顔を赤く染め上げたフィオナが言葉を失ってシャシャを見ると、彼は余裕たっぷりな表情で微笑んでいた。 「ねぇ、フィオナ。僕の事を諦めないでね」 「な、なにを…?」  シャシャの言葉の意味を理解出来ずに狼狽えるフィオナ。すると、そんな二人に「お二方」とヒメロが声を掛けながら近付いてきた。 「夜も遅くなりましたので、そろそろお戻りください」  ヒメロの方を振り返り、シャシャが立ち上がった。 「じゃあ僕は一旦城に戻るかな、こんな姿だしね」  城…?と、ポカンとした顔で立ち上がったシャシャを見上げるフィオナ。 「畏まりました。シャルル皇子殿下」  ヒメロがシャシャに綺麗な貴族式のお辞儀する中、フィオナは唖然とした表情で固まった。 「? フィオナ、戻らないの?」  一向に立ち上がらないフィオナを不思議に思い、シャシャ…いや、シャルルが振り返り彼女に声を掛ける。 「え……えぇぇ!?」  フィオナは気付かなかったが、その時夜空では星が流れていた。
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