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フィオナにとっては地獄のシャルルお着替えタイムが終わり、メイド達が部屋から引いていく。
「本日はどのように過ごされますか?」
気を取り直したフィオナがシャルルに尋ねると、彼は「そうだねぇ…」と相槌を打った。
「僕の今日の予定は『フィオナとデート』かな」
「…な、何を仰っているんですか?」
フィオナは顔を赤らめながらも、シャルルにジト目を向けながら言った。
シャルルはよくこうして自分を揶揄っては、こちらが慌てふためく様子を見て楽しんでいるのだ。
こういったある意味心臓に悪い冗談を、まるで嘘じゃないかのように言ってくるシャルルはとても手強い…が、自分は騙されないぞ! と、いう気持ちのフィオナ。シャルルは本気で言っているというのに…報われない。
「揶揄うのはやめて下さい!」
「………うん、そうだね。ごめんね、フィオナ。実は今日、城下町の様子を見て市場の勉強でもしようかと思っていたんだ」
この真面目すぎる女騎士には今、いくら甘い言葉を吐いても通用しないのだろうと思ったシャルルは計画を変更させる。
それっぽい理由を付けて、フィオナとの城下町デートへこじつけるつもりだ。
「そうでしたか! では、殿下の外出にあたり護衛隊を編成してきます!」
ぱっと顔を明るくさせたフィオナは、張り切った様子で敬礼しシャルルの部屋から出て行こうとするので、シャルルは慌てて彼女を止めた。
「フィオナ、護衛隊はいらないよ」
「え…でも…」
「…護衛の騎士を引き連れて歩けば、僕が皇子だってすぐに分かるでしょ。それじゃあ、平民たちの本当の生活は見れないし勉強にならないよ」
「そ、そうですね…確かに…?」
シャルルに丸め込まれるフィオナは、少しばかり不安そうな顔で頷いていた。
「だから僕の護衛はフィオナだけで…」
「私、だけですか…?」
「うん。頼んだよ、僕の騎士さん」
シャルルがそう念を押すように言うと、フィオナは苦笑いを浮かべた。フィオナの顔に『不安だ』と、書いてある。シャルルはニコッと笑って、優しい声でそんなフィオナに言った。
「大丈夫。君は毎日訓練所で鍛錬しているじゃないか。その努力は絶対にフィオナの力になってるから」
シャルルの言葉にフィオナは目を開く。
(シャルル殿下…私の努力を、ちゃんと見て下さっていたんだ…)
感動する気持ちがフィオナの中に込み上がってくる。主人がここまで褒めてくれているのだ、その期待に応えなくてはならない! と、フィオナは気合いを入れる。
「シャルル殿下、お任せください! 私が必ずや、あらゆる危険から殿下をお守りしますから!」
「うん、お願いね」
シャルルは楽しそうに笑いながら答える。
(…けど、流石に誰にも告げずに城を出るのは大騒ぎになるから、ヴァン辺りに伝えておこう。…彼なら僕の気持ちも察して上手く動いてくれるだろうから)
皇宮で騒ぎにならないように対策を立てながら、シャルルは目の前のフィオナに笑いかける。
「それじゃ、行こうか」
「はい!」
こうして、シャルルは今日フィオナと城下町デートをすることに成功した。
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