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通話を終えた天音が戻ってくると、「あれ、席替えしてる」と言い、サラの席に座った。 「しゃちょー、大丈夫だった?」 「ん?うん、遅番の子達からだったけど、依頼のスケジュール変更ってだけだった」 「しゃちょーかあ。なんかかっこいいな、天音のくせに」 「ねー、かっこいい。毎日頑張っててほんとーにすごいし偉いよ。尊敬する」 「何言ってんだ、珠希のお父さんの方が1億倍すごいじゃん。開発したプロテインの広告いろんなとこで見るよ。競合の中で売り上げが一番伸びてるって、こないだ何かで読んだ」 「あれ嘘だよたぶん。インスタとかtiktokのインフルエンサーにお金ばら撒いて、すごい流行ってるかのように宣伝してるだけ」 「あ…あそう、なるほど…」 「それにしても、22もう社長かあ。みんなが新卒のペーペーの中、親方やってるなんてすげーよなあ」 「正確には19からね」 「あ、そっか。高校出てすぐだもんなあ」 「ん?……うん………まあ……でも全然大したことは……」 サラが意識的に天音から目を逸らし、「こーよー、僕にもボトルのお酒ちょっとちょうだい」と、ウーロン茶の入っていた空のグラスを差し出した。 「天音だけ免許合宿行けなかったのは残念だったな」 サラのグラスに酒を注ぎながら、高鷹が突然免許の話をした。高3で各々の誕生日に合わせてスクールに通う生徒も多かったが、みんな受験勉強で忙しかったので、彼らは卒業旅行を兼ねてサクッと免許を取れる合宿に行くことにしたのだ。 「お前だけ会社の立ち上げの準備で忙しくて結局合宿には集まれなかったろ。いつかはこのメンツで旅行に行きたいけどよー、しばらくはもうみんな無理だからな」 「……そうねえ」 「それでお前、いつの間に免許取ってたん?高校出てすぐに起業して、しばらくめっちゃ忙しいみたいなこと言ってたのに。その年にはもうトラック運転してたのビビったぜ」 高鷹は頬杖をつき、酔いの回った据わった目つきで天音をじっと見た。 「うちのトラックの大きさなら……別に普免でいけるよ」 「そうだけどよー、技術的なことがあるだろ。俺らよりあとに普通の車校通ったとして……最短で7月とか8月には免許取れてたとして、取り立てホヤホヤであろう秋にはもうトラック買ってなかったか?」 「買ってたけど、小型ならそれほど難しくないし」 「いつ免許取った?」 「え……」 「あの頃、まだ大学1年だった俺らがたまには会おうって誘っても、ロクに来れねえほど仕事でクソ忙しかったろ。日中はどの曜日もやることあるとか言ってたしよ。そんな過密スケジュールの中でどうにか車校通ってたんだとして、お前はニセンニジューネンの何月に免許とったんだ?」 4人が高鷹と天音を交互に見やる。天音はそのうちのサラと目を合わせ、(急になにコイツ?!)という表情をして見せると、サラは少しぼんやりした表情をつつも、「わからない」という目で小さくかぶりを振った。
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