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"I'm looking forward to it already. I'm going to be just like you: the job, the family the fucking big television the washing machine the car the compact disc and electrical tin opener, good health low cholesterol dental insurance.... family Christmas indexed pension tax exemption clearing the gutters getting by, looking ahead to the day you die." 「おはよう」 「おはよう」 「………」 「………」 朝9時、事務所。 どんなに飲んだくれようが、言い合いになろうが、昔の恋人の家に泊まろうが、仕事がある限りこの時間には死んでもここにいる。 「……キミ何で今日こんな早いの?会議11時からだよ」 「高橋さんが風邪ひいて、今朝は店開けられなさそうって、昨日の夜中に連絡きたから」 「え、そうだったんだ」 「うん」 「……代わってくれてありがとう」 「うん。……ていうかちゃんとお酒抜けてるよね?」 「分からない。でも今日は本庄くん来るから、運転してもらう」 「まったく……」 「ごめん……いろいろと」 そのに含まれるものを、サラはいちいち掘り返す気などない。ごめんと謝られたから、「僕もごめん」と簡素に返した。 「昨日ゴローの家泊まったの?」 「うん」 「なんか気まずそうな感じしたけど、大丈夫だった?」 「僕たち2人とも恥ずかしがり屋だから、最初は気まずかったけど……でももう大丈夫。そういうのはなくなった」 「そっか。よかった。わだかまりは消えたんだね」 「うん消えた。セックスまでしちゃったし」 「そうなんだ、じゃあもう平気…………って、えっ?」 時間差で驚愕し、持っていた書類をバラバラと落とす。 「そしたらまた前みたいな感じに戻れた」 「……いや……ていうかそれどういうセックス?」 「どういうって何?普通のセックスだよ」 「そうじゃなくて、なわけ?」 「ええ……?」 「またヨリ戻したとか?」 「んーん、別に」 「じゃあ酔ってたから?」 「それもちょっとあったのかなあ?」 「それただの勢いだったとしても、ゴロー絶対再燃すると思うよ、君に」 「う〜ん……」 「う〜んじゃなくて。君から振ったとき泣きついてきたみたいなこと言ってたじゃん。そのあとに付き合った子とも去年別れたって言ってたけど、絶対君のこと忘れられなかったからだよ。それでまた君とそんなことになっちゃったら、もう精神もたないだろ」 「でも子どもとか結婚とか望めない人生なんてあの人には無理でしょ。僕のこと好きでもそういうのを捨てる覚悟はないよ絶対」 「うわ辛辣……」 「現実的なの」 「ならセックスするなよ」 「彼も大人になればいい」 「いーやそれは違う。覚悟ができてないのは君だろ。君にはゴローの愛と向き合う強さがなかったんだ」 「何それ。歳取ってから後悔させるかもしれないのに、愛してたから仕方なかっただなんて、人の人生に対してそんな無責任なこと言えるの?そんなの愛でも覚悟でもないでしょ」 「そういうことを擦り合わせて悩みまくってその結果それでも一緒にいたい、ってなるのが愛だろ。そこまで辿り着ける我慢強さとか忍耐力とか愛の深さから君は逃げたんだ」 「………」 「お、大人なのに泣くのはずるいぞ」 「……泣いてないよ。でもなんか辛くなってきた。ていうかまた言い合いしたいの?」 「……面倒だからしたくない」 「じゃあやめよう」 「うん。……でもまあ、昔の男と会ったらしたくなるのはちょっと分かるよ」 「僕はゴローしか知らないけどね」 「……僕も別に全然いないけどさ」 サラの涙目によって、昨晩からピリついていた空気の硬さがようやくほどけてきた。
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