第1話

2/12

817人が本棚に入れています
本棚に追加
/14ページ
 相思相愛だと囁かれていた高校~大学の時に付き合っていた彼氏にさえ捨てられてしまったものだから、恋人に去られるたびに「またか」と思ってしまう。  多分、私が真面目で面白味のない女性だからだろう。フラれる理由はいつもそれ。そして必ず愛らしい妹と比べられる。  私にはひとり、妹がいる。私を慕って、私の後ろをついてきてくれる可愛い妹――名を、金井深冬(かないみふゆ)、25歳。  愛らしいピンクブラウンのふんわりボブ、ゆるふわパーマがよく似合っていて、目元はくりっとお人形のように大きな目、小さな唇はほんのり色づいたさくらんぼのように赤く、笑うとほんとうに可愛い女の子。セミロングの黒髪をひとつにくくり、真面目が服を着て歩くような容姿の私とは大違いだ。  2年前、もうすでに資産家の年上の男性――金井宗太郎(かない そうたろう)と結婚をして、悠々自適な生活を送っている。愛らしい妹は昔からちゃっかり者で、ぱっとしない平凡な我が家をいつも憂いていて、お金持ちの素敵な男性と結婚するんだ、と張り切っていた。  深冬のことは勿論大好きだけれど、歴代の彼氏から、私はいつも妹と比べられていた。みんな深冬を好きになってしまう経緯があった。  中学生の時、両思いになった同級生も、憧れていた先輩も、好きになった男の子も、みんな深冬を選び、彼女を賞賛した。  高校に入ってからは彼氏を作ることを諦めたけれど、陸上部の三矢康太(みつやこうた)に密やかな想いを寄せていた。彼は遅い時間でも早朝でも、誰よりも早く走るための努力を怠らない人だった。インターハイで惜しくもあと一歩が届かずに試合に負けた帰り道、康太が私のことを好きだと告白してくれた。  嬉しかった。康太を支えたくて陸上部のマネージャーを始めて、近くで頑張る姿を見ていたから、天にも昇る気持ちだった。初めての彼氏が康太だなんて、嬉しくて、嬉しくて、たったひとことのメッセージを送ったり、もらうだけでも幸せな気分になれた。
/14ページ

最初のコメントを投稿しよう!

817人が本棚に入れています
本棚に追加